特定施設とは何か

特定施設の定義や呼称の違いについて。

更新日:2021/07/14
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特定施設とは

介護施設について調べていると、「特定施設」という言葉がよく出てきます。

例えば「特定施設なので安心です」とか、「特定施設の指定を受けてます」とか、「介護専用型の特定施設です」とか、です。

ここでは、「特定施設とはなんなのか?」について、調べた範囲のことをまとめてみたいと思います。

特定施設の定義

様々な資料を読み進めていくと、「特定施設」という言葉が複数の意味で使われていることが分かりました。

書き手の解釈や文脈によって「特定施設」の定義が変わるため、注意して読まないと何を意味しているのかが分からなくなってしまいます。

以下は、よく見かける特定施設の定義です。

特定施設の定義A
特定施設入居者生活介護」の指定を受けた施設のことを特定施設という。
特定施設の定義B
「特定施設入居者生活介護」の指定を受けることができる施設のことを特定施設という。

特定施設の定義A

この定義における「特定施設」とは、「有料老人ホーム」「サービス付き高齢者向け住宅」「軽費老人ホーム」「養護老人ホーム 」のうち、「特定施設入居者生活介護」の指定を受けている施設のことになります。

例文:「この施設は特定施設なので、施設内のスタッフから介護サービスを受けられます。」

※多くの資料ではこの解釈に基づいて説明されているようです。

特定施設の定義B

この定義では、「特定施設入居者生活介護」の指定の有無にかかわらず、「有料老人ホーム」「サービス付き高齢者向け住宅(一部を除く)」「軽費老人ホーム」「養護老人ホーム 」のことを「特定施設」としています。(これら施設の総称として用いられています)

例文:「有料老人ホームは特定施設のため、基準を満たすことで特定施設入居者生活介護の指定を受けられます。」

※「定義A」ほど多くはありませんが、この解釈に基づいて説明されている資料も結構あります。

その他

上記の他に、略称として「特定施設」という言葉が使われている場合があります。

例えば、

例1:「特定施設入居者生活介護」を略して「特定施設」としている場合は、
「この施設は特定施設の指定を受けているため、施設内のスタッフから介護サービスを受けられます。」

例2:「特定施設入居者生活介護事業所」を略して「特定施設」としている場合は、
「この施設は特定施設なので、施設内のスタッフから介護サービスを受けられます。」

などです。

※「定義A」と上記の「例2」は、結果として同様の表現になります。

介護保険法における規定

色々と調べていくうちに、最終的に「介護保険法」に行き着きました。

以下は、介護保険法の中で「特定施設」と「特定施設入居者生活介護」について規定している箇所になります。

介護保険法 第8条の11(e-Gov法令検索)から引用 ※新規ウィンドウで開きます

この法律において「特定施設」とは、有料老人ホームその他厚生労働省令で定める施設であって、第二十一項に規定する地域密着型特定施設でないものをいい、「特定施設入居者生活介護」とは、特定施設に入居している要介護者について、当該特定施設が提供するサービスの内容、これを担当する者その他厚生労働省令で定める事項を定めた計画に基づき行われる入浴、排せつ、食事等の介護その他の日常生活上の世話であって厚生労働省令で定めるもの、機能訓練及び療養上の世話をいう。

※上記の「その他厚生労働省令で定める施設」は、「養護老人ホーム」と「軽費老人ホーム」のことを指しています。また、「サービス付き高齢者向け住宅(一部を除く)」は「有料老人ホーム」の枠に含まれます。

厚労省の資料における表現

厚労省が発行する下記の資料では、「特定施設」と「特定施設入居者生活介護」の関係性が図によって分かりやすく表現されています。

当サイトの解釈

介護Waysでは総合的に判断し、「定義B」の解釈に基づいて「特定施設」という言葉を使わせていただくことにしました。

少し紛らわしいかもしれませんが、上記の点、ご了承いただけたらと思います。

また、「特定施設入居者生活介護」については、略さずにそのまま表記するようにしています。

介護専用型と混合型

特定施設には「介護専用型」と「混合型」があります。

「特定施設入居者生活介護」の指定の有無にかかわらず、入居者を「要介護1~5」の人に限定している施設を「介護専用型特定施設」といい、それ以外を「混合型特定施設」といいます。

介護専用型特定施設
要介護者のみ入居可能としている特定施設
混合型特定施設
要介護者以外の人も入居可能としている特定施設

指定の有無による呼称の違い

特定施設では、「特定施設入居者生活介護」の指定の有無によって、施設の呼び方が異なる場合があります。

以下は、指定の有無による呼称の違いを表したものです。

施設の種類[上段] 指定あり[中段] 指定なし[下段]
有料老人ホーム 介護付き有料老人ホーム 住宅型有料老人ホーム
サービス付き高齢者向け住宅(サ高住) 介護付きサ高住
または
介護型サ高住
一般型サ高住
または
自立型サ高住
ケアハウス 介護付きケアハウス
または
介護型ケアハウス
一般型ケアハウス
または
自立型ケアハウス

「介護付き(ケア付き)」と「介護型」の違い

サービス付き高齢者向け住宅やケアハウスでは、「介護付き~」「ケア付き~」「介護型~」などと表記される場合があります。

このうち「介護付き」と「ケア付き」は同じ意味を持っていて、どちらも「特定施設入居者生活介護の指定を受けた施設」であることを表しています。

※特定施設入居者生活介護の指定を受けた施設にのみ、「介護付き」「ケア付き」と表示することが認められています。

それに対し「介護型」とは、「要介護者を受け入れる施設」であることを表します。特定施設入居者生活介護の指定を受けた施設だけでなく、併設する訪問介護事業所などが介護サービスを提供する場合にも「介護型」と表示することがあります。

介護付き、ケア付き
特定施設入居者生活介護の指定を受けた特定施設
介護型
要介護者を受け入れる特定施設(特定施設入居者生活介護の指定を受けているとは限らない)

介護付きホーム

比較的新しい呼称として、「特定施設入居者生活介護」の指定を受けた施設(特定施設入居者生活介護事業所)のことを「介護付きホーム」と呼ぶ場合があります。

これは、「特定施設入居者生活介護事業所」(略した場合は「特定施設」)という名称が施設の内容をイメージしにくいことから、その代わりとして2016年頃から使われ始めたものになります。

「特定施設なので安心です!」と言われても何が安心なのかよく分かりませんが、「介護付きホームなので安心です!」であればイメージしやすいですね。

著者情報

高橋 永治(たかはし えいじ)

介護情報サイト「介護Ways」の運営者。

1996年、自身にとって初となるWebサイトを立ち上げ、98年からは企業向けのWebサイト制作サービスを開始。現在は企業サイトの運営管理、および複数の自サイトの運営管理を行っている。

親が認知症になってからは介護の世界に関心を持ち始め、介護保険制度について調べていくうちに「この複雑で分かりにくい情報を整理したい」という思いに駆られ、10ヶ月に渡る制作期間を経て2020年1月に介護Waysを公開。「簡潔に分かりやすく」がモットー。