介護休業給付の概要

支給の条件、支給期間と支給額、制度の利用方法について。

更新日:2020/09/09
共有
Twitter
Facebook
LINE

介護休業給付とは

介護休業給付とは、家族を介護するために休業した場合、休業期間中の賃金の一部が雇用保険から支給されるという制度です。

この制度を利用することで、最長で3ヶ月間(3分割が可能)、賃金の「67%」までを受給できるようになります。

※これは介護保険ではなく雇用保険の制度です。原則、事業主を通してハローワークに申請することになり、その手続きは休業明けに行われます。(そのため、支給の時期も休業明けとなります)

支給対象となる介護休業

介護休業給付金は、下記の条件を満たす休業が支給の対象となります。

対象となる家族
配偶者(事実婚を含む)、父母(養父母を含む)、子(養子を含む)、祖父母、兄弟姉妹、孫、配偶者の父母
対象となる介護の状況
対象の家族が、負傷、疾病、身体上または精神上の障害により、「2週間以上」にわたり常時介護(歩行、排泄、食事等の日常生活に必要な便宜を供与)を必要とする状態にあること
事前に申し出が必要
予め介護休業の期間を事業主に申し出ておく必要があります
  • ※上記の「2週間以上」とは、休業の期間ではなく「常時介護を必要とする期間」のことです。介護を必要とする期間が2週間以上であれば、休業期間がそれ未満であっても介護休業の対象となります。
  • ※対象の家族が要介護認定を受けていなくても、上記の条件を満たせば介護休業の対象となります。(要介護認定とは別の基準で判断されます)

支給の対象者

介護休業給付金は、下記の全ての条件を満たす人が支給を受けられます。

支給の対象となる人
  • 雇用保険の被保険者である人(一般被保険者および高年齢被保険者)
  • 介護休業開始日前の2年間で、12ヶ月以上雇用保険に加入している人(1ヶ月あたりの賃金支払基礎日数が11日以上必要)

期間雇用者の場合は、上記に加え下記の条件も満たす必要があります。

期間雇用者の条件
  • 介護休業開始時において、同一事業主の下で1年以上勤務している人
  • 介護休業開始日から「93日 + 6ヶ月」の間、同一事業主の下で雇用継続が見込める人

なお、介護休業給付は職場復帰を前提とした制度のため、休業取得時に退職が確定(予定を含む)している場合は支給の対象にはなりません。

支給期間と支給額

支給期間

支給対象となる同一の家族について、通算で「93日」まで支給されます。この日数内であれば、最大で「3回」まで分割して利用することができます。

※介護休業開始日から1ヶ月ごとに区切った期間を「支給単位期間」といいます(休業開始日を起点にして数えます)。1つの支給単位期間中に就業日が11日以上ある場合、その支給単位期間は支給の「対象外」となるので注意が必要です。

支給額

次の計算により、賃金の「67%」が支給されます。

賃金日額 × 支給日数 × 67% = 支給額

※上記の「賃金日額」は、介護休業開始前6ヶ月間の合計賃金を180で割った金額となります。

賃金ごとの支給額の目安は次のようになります。

賃金月額と支給額の目安(1ヶ月間休業した場合)
賃金月額[上段] 支給額[下段]
150,000円の場合 100,500円
200,000円の場合 134,000円
300,000円の場合 201,000円

休業期間中に一定以上の賃金が支払われた場合は、支給額の減額、または未支給となる場合があります。

上限額と下限額

給付金の算定に用いる賃金の月額には、「上限額」と「下限額」が設定されています。

※下記の金額は2020年8月1日時点のものです。(毎年8月1日に見直しが行われます)

賃金の上限額と下限額(月額)
上限と下限[上段] 賃金[下段]
賃金の上限額 502,200円
賃金の下限額 77,220円

例えば、賃金の月額が600,000円の人は502,200円、60,000円の人は77,220円として給付額が計算されることになります。

そして、上記の賃金に基づいた給付金の「支給上限額」と「支給下限額」は次のようになります。(賃金×0.67)

給付金の上限額と下限額(月額)
上限と下限[上段] 支給額[下段]
給付金の上限額 336,474円
給付金の下限額 51,737円

介護休業給付の利用方法

介護休業給付金の支給を受けるには、以下の2つの手続きが必要です。

※原則、事業主を通して申請を行いますが、本人が希望する場合は「支給申請」のみ本人が手続きを行うことも可能です。

受給資格確認
事業主が行います
支給申請
事業主か本人が行います(事業主が行うことが推奨されています)

申請期間

申請期間は、介護休業終了日(介護休業が3ヶ月を超える場合は、3ヶ月が経過した日)の翌日から「2ヶ月を経過する日の属する月の末日」までとなります。(例:終了日が7月15日の場合は9月の末日が期限となります)

申請先

事業所を管轄するハローワークに申請します。

必要書類

申請に必要な書類は次の通りです。

受給資格確認に必要な書類
  • 雇用保険被保険者休業開始時賃金月額証明書
  • 上記証明書の記載内容が確認できる書類(賃金台帳や出勤簿等)
支給申請に必要な書類
  • 介護休業給付金支給申請書
  • 本人が事業主に提出した介護休業申出書 ※本人が用意
  • 介護対象家族の氏名、性別、生年月日、本人との続柄等が確認できる書類(住民票記載事項証明書等) ※本人が用意
  • 介護休業の開始日・終了日、介護休業期間中の休業日数の実績が確認できる書類(出勤簿、タイムカード等)
  • 介護休業期間中に支払われた賃金が確認できる書類(賃金台帳等)

支給方法

給付金の支給が決定された場合は、その決定から約1週間後に、本人が指定した口座に振り込まれます。

著者情報

高橋 永治(たかはし えいじ)

介護情報サイト「介護Ways」の運営者。

1996年、自身にとって初となるWebサイトを立ち上げ、98年からは企業向けのWebサイト制作サービスを開始。現在は企業サイトの運営管理、および複数の自サイトの運営管理を行っている。

親が認知症になってからは介護の世界に関心を持ち始め、介護保険制度について調べていくうちに「この複雑で分かりにくい情報を整理したい」という思いに駆られ、10ヶ月に渡る制作期間を経て2020年1月に介護Waysを公開。「簡潔に分かりやすく」がモットー。